連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。第11回は、「アコードエアロデッキ」(デジタル編集:A Little Honda編集部)

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アコードエアロデッキという超カッコいいクルマがあったのをご存じだろうか?1985年6月に3代目となりリトラクタブルヘッドライトを採用したアコード。その時セダンとともに登場したのがこのエアロデッキだったのだ。

エアロデッキはとても斬新だった。何しろフルサイズ近くにまで拡大されたアコードに大胆にも3ドアハッチバックを加えたのである。全長はセダンのリア部分を200mm切り詰めていたものの決して小さくはなかった。

特徴的だったのがロングルーフで、そのルーフにまわり込むように開くリアのハッチゲートも注目されたのだ。まわり込んだ上部はガラスだったから後席は明るく、ロングルーフやリアをスパッと切り落としたデザインは当時のワンダーシビックも採用していたものだ。だからシビックをひと回り大きくしたと言えなくもない。

ただしエアロデッキは3ドアだから基本は前席優先、それでいてリアシートをアレンジすればワゴンとしても使えたのである。またロングルーフゆえ、後席に座っても圧迫感がないのも良かった。リアゲートの開口部は意外と高かったが、上部が大きく開くためかさばる荷物も入れやすい。エアロデッキはクーペをワゴンに仕立てるシューティングブレーク的発想だったのだ。だから輸出先のイギリスでは人気だったと言うのも納得である。

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そのアコードは、FF車として世界初となる4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションを採用した。ノーズが低いのはそのおかげである。ダブルウイッシュボーンと言えば、当時はスポーツカー用とされていただけに「さすがホンダ!」の声が上がったのだ。

エンジンもホンダらしさが光っていた。最上級グレードのSiに搭載された最高出力160ps(グロス値/ネット145ps)のB20A型直4DOHCエンジンはボア×ストロークが81.0mm×91.0mmとロングストローク(この頃のホンダはこのパターンが多かった)。そのためトルクフルで扱いやすく、それでいてアクセルペダルを踏み込めば6500rpmまで一気に吹け上った。このエンジンをベースに無限がF3用エンジンを開発したことはホンダ通ならご存じのはず、かも。

3代目アコードは世界的に見ても大ヒットとなる。が、エアロデッキはというと最後まで人気に火が付くことはなかった。志は良かったのに、残念。ただし、ホンダはこのルーフにまわり込むリアゲートにはその後もこだわる。99年のアヴァンシアで、そして現在ではジェイドに採用。こうした細かなところでのホンダのこだわり(たとえ受けなくても続けること)、私は好きです。

そんな私はと言うと2000年頃に同業者が手放すとの報に接し、「よっしゃ!」と思ったのもつかの間、話が流れて涙を呑んだ次第である。発表当時はコンパクトなモデルに夢中だったので購入には至らず。よって欲しかったけど残念ながらマイカーにはできずじまいだったのはこのアコードエアロデッキだ。

ちなみに、アコードエアロデッキの型式はトップモデルの2.0SiがCA1、1.8L DOHC搭載がCA2、そして1.8L SOHC搭載がCA3となっていた。

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