連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。第8回は、1970年10月に軽自動車初のスペシャルティカーとして登場した「ホンダ Z」です。(デジタル編集:A Little Honda編集部)

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N360をベースにクーペフォルムとしたものだが、個人的に歴代ホンダ軽自動車の中でビートに次ぐ秀逸なデザインだと思っている。わずか全長3×全幅1.3mという限られた枠内でここまでカッコよく仕立てていたのは正に感動モノ。ロングノーズ、それでもってルーフはファストバックとはせず、リアはスパッと斜めにカットする。特徴的なリアには先進のハッチゲートを備える。そのリアゲートが黒で縁取りされていたため「水中メガネ」とも呼ばれていた。

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ゲート下にはスペアタイヤを収める引き出しを備える。他に例を見ない独創性に満ちていたのだ。試作モデルを目にした本田宗一郎氏が「シビンみたいなクルマじゃねえか!」と評したと聞く。搭載エンジンは空冷2気筒SOHCのツインキャブ仕様で最高出力36psを発生。最上級のGSは5速MT、フロントディスクブレーキ、ラジアルタイヤと軽自動車初を連発する。某メーカーの“Z”にも引けを取らない先進性をフル満載してしたのだ。ちなみに最高速は120km/hだった。

空冷N360が水冷ライフへとスイッチするに伴い71年11月、ホンダZもライフベースとなる。前方へホイールベースが80mm伸ばされることでプロポーションは良くなる。フロントグリルがラジエター冷却のため大型化されたのはやむなしといえよう。EA型エンジンは水冷化でもCVツインキャブで最高出力36psをキープ。最上級はGTLとなるが残念ながらフロントディスクブレーキは廃止された。

72年11月にはセンターピラーを廃したハードトップにボディを変更。フロントグリルを当時大人気だったシビックにあやかって2分割のハニカムタイプに変更する。リアの“引き出し”はなくなった。そして最上級グレードはGSSを名乗ることとなる。さらに73年8月に安全性の改良を行うが、74年10月で生産が終了された。

私は70年代末に最終型73年式のGSSを中古で手に入れる。グリーンだったボディをホンダZを象徴するオレンジに全塗装して楽しむ。昔からボディカラーは派手が好み(人間が地味なので…)。

5速のMTは左下が1速のレーシーなヒューランドパターン。ただし1速はノンシンクロのため、完全に停止していないとギアは入らない。だが、2~5速は山道で十分に楽しめた。2気筒エンジンは9000rpmまで回せるのが気持ち良かった。ボア×ストロークは67.0×50.6mmというショートストロークならではの味だった。パワー感はと言うと正直“イマイチ”だったが…。

後にEA型エンジンを手掛けた川本信彦氏(4代目ホンダ社長)にインタビューした際に伺うと、「キャブのシャクリがどうしても解決しなかったんだよね」とのこと。とは言え、“高回転をホンダの是”とする私にとってはタコメーターの針の動きを見るのが常に楽しみだったのだ。

ホンダZの型式はSA型とライフと共通。そう、ライフの後期にはホンダZに準じた2ドアGS、4ドアGTLなるツインキャブ仕様の最高出力36ps+5速MTモデルもあった。

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