2018年12月13日、ホンダのインサイトが復活した。このミドルサイズセダンは、ハイブリツド専用車であるが、搭載されたパワートレーンは2モーター化されている。興味深いこの新型モデルにさっそく試乗した。試乗車はインサイトEXブラックスタイルである。

10年振りに復活したインサイト

初代型インサイトは1999年、そして2世代目は2009年にそれぞれデビューしている。そして新型となる3代目インサイトが2018年12月18日に発表された。つまり、計算されたかのようにインサイトは10年ごとに新型が登場しているというわけだ。ということは次のインサイトは10年先……?

画像: ミリ波レーダーと単眼カメラを融合した先進の安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」は全車に標準装備される。

ミリ波レーダーと単眼カメラを融合した先進の安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」は全車に標準装備される。

ところで「INSIGHT」とは、英語で「洞察力」、「眼識」という意味がある。そう、このクルマは10年先を見据えて開発されているとも言えるのだ。その名前からもわかるように鋭い「洞察力=インサイト」を持ち、これからの10年を考えたホンダのハイブリッドの提案、環境車の考え方が詰まっているということなのである。

現在、クルマのパワートレーンは多様化している。簡単に分けただけでもガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、それらにモーターを組み合わせたハイブリッド=HEV、モーターのみで駆動する電気自動車=BEV、そして燃料電池車=FCEVなどがあるが、そのなかでもハイブリッド車は様々なシステムが存在している。

搭載モーターの数だけでも1モーター、2モーター、3モーター、4モーターと各社がそれぞれクルマに見合ったハイブリッドシステムを採用、さらにプラグインハイブリッド(PHEV)があったりと覚えるだけでもひと苦労だ。

とくに高い技術力を誇るホンダは1モーター、2モーター、3モーターといったハイブリッドシステムを持っている。1モーターはフィットなどの小型車、2モーターは中型車以上、3モーターはフラッグシップのレジェンドやスーパーカーのNSXに搭載しているのである。

そして今回、登場したインサイトは、2モーターハイブリッドシステムを持つハイブリッド専用車となる。もともとインサイトは初代も2代目もハイブリッド専用車だったが、とくに今回は10年先を見据えた進化を遂げているというのが特徴だろう。

画像: 見え方によって紫色も浮かび上がるルーセブラックメタリックはEXブラックスタイルの専用色だ。

見え方によって紫色も浮かび上がるルーセブラックメタリックはEXブラックスタイルの専用色だ。

i-MMD=2モーターハイブリッドシステム

ちなみにホンダは、1モーターハイブリッドをi-DCD(インテリジェント デュアルクラッチドライブ)、2モーターハイブリッドをi-MMD(インテリジェント マルチモード ドライブ)、3モーターハイブリッドをSH-AWD(スーパーハンドリング オールホイール ドライブ)と呼んでいる。そしてこれらハイブリッドは日本で累計170万台も販売しているのである。

画像: パワートレーンは2モーター式ハイブリッドシステムを搭載、1.5LVTECエンジンと組み合わせている。

パワートレーンは2モーター式ハイブリッドシステムを搭載、1.5LVTECエンジンと組み合わせている。

さて、ひととおりホンダのハイブリッドの種類をおさらいしたところで、今回の主役インサイトの話に移ろう。このハイブリッド専用車は、2モーターハイブリッドであるSPORT HYBRID i-MMD(以下i-MMD)を搭載していることは前述したが、このシステムは、今後のホンダの主力となるハイブリッドシステムで、すでにアコードやオデッセイ、CR-Vなどにも積まれ、その特徴は高効率であることにある。

インサイトが搭載するエンジンは、1.5L直列4気筒DOHC VTECで、最高出力80kW(109ps)/6000rpm、最大トルク134Nm(13.7kgm)/5000rpmを発生する。そして走行用モーターは、最高出力96kW(131ps)/4000-8000rpm、最大トルク267Nm(27.2kgm)/0-3000rpmを発生する。

これを見てもわかるようにエンジンよりモーターの方が高出力、高トルクなハイブリッドシステムなのである。そしてもうひとつ発電用モーターも搭載しているのがインサイトだ。これらが実に上手くシームレスに連携して、気持ちいい走り、効率のいい走りを実現しているというわけだ。

画像: 使用燃料はレギュラーガソリン。WLTCモード燃費はLXが28.4km/L、EXが25.6km/Lを記録する。

使用燃料はレギュラーガソリン。WLTCモード燃費はLXが28.4km/L、EXが25.6km/Lを記録する。

エンジンは、たとえば高速道路や坂道のような状況で駆動するがそれ以外はモーターで駆動しエンジンは発電用として使われている。つまりエンジン車よりはEV車に近いハイブリッドだと言ってもいいだろう。だから燃費もいい。WLTCモード値で25.6km/L(EX)〜28.4km/L(LX)を実現する。これは従来のJC08モード値にすればなんと31.4km/L(EX)〜34.2km/L(LX)にもなる。

スイッチひとつで走りのモードが選べる

走りも上質なものだということが乗ってすぐに感じられた。モーターによる駆動はとても滑らかで、当然静かだ。街中を走ってるとほとんどのシーンでエンジンが始動することはない。また3つのドライビングモードが用意され、走りと燃費のバランスに優れた「NORMAL」、省燃費の「ECON」、スポーティな加速が楽しめる「SPORT」がスイッチひとつで選択できるようになっている。

さらに各モードでEVスイッチを押すとバッテリーの電力を使い、モーターだけで走行するEVモードも備える。深夜や早朝の住宅街などでエンジン音を控えたいときなどにこれは便利な機能である。いn

画像: インテリアは広範囲にわたりソフトパッドが採用される。またハンドルにあるスイッチ操作でメーターの表示が切り替えられる。純正ナビも標準装備だ。

インテリアは広範囲にわたりソフトパッドが採用される。またハンドルにあるスイッチ操作でメーターの表示が切り替えられる。純正ナビも標準装備だ。

面白い機能としては、アクセルペダルを一定量踏み込むとスイッチを押すようなクリック感が感じらるポイントが設定されるというものがある。これはこのクリック手前の範囲でアクセルペダル操作すれば静かで快適な走りができ、もっと加速が欲しいときはクリックポイント以上に踏み込めばいいというわけである。

さらにアクセルオフ時の減速度をハンドルを握ったままセレクターで変更可能な「減速セレクター」という装備も採用されている。

またカーブが苦手な人にも朗報だ。少ない操作で狙いどおりのラインをスムーズに走ることができるよう「アジャイルハンドリングシステム」を採用している。これはカーブでの車速や操舵量などから車両の動きを予測し、ブレーキを自動制御、正確かつ安定して走行できるようにしたものだ。

画像: 試乗車のEXブラックスタイルが装着するのは215/50R17サイズのタイヤとなる。

試乗車のEXブラックスタイルが装着するのは215/50R17サイズのタイヤとなる。

ASV+++の最高ランクを獲得

さらに先進の安全運転支援システムも充実している。なんとHonda SENSING(ホンダセンシング)が全車に標準装備されてるのだ。

このホンダセンシングには、衝突軽減ブレーキ/誤発進抑制機能/歩行者事故低減ステアリング/路外逸脱抑制機能/渋滞追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)/車線維持支援システム(LKAS)/先行車発進お知らせ機能/標識認識機能/後方誤発進抑制機能/オートハイビームが含まれ、単眼カメラとミリ波レーダーにより高度な検知機能を持っているのが特徴だ。

ちなみにこのホンダセンシングが搭載されたインサイトは、第三者機関からも評価され、ASV=Advanced Safety vehicle(先進安全車)として2018年度予防安全性能評価 最高ランク“ASV+++”を獲得している。

スタイルも美しい。セダンとしてのパッケージを成立させながら流麗なフォルムでありかつスポーティな仕上がりとなっているインサイト。

インサイト用に専用設計されたインテリアは、ハイクオリティで落ち着いた空間演出がなされている。広い範囲にわたってソフトパッドを採用するなど高級感もある。これなら長い移動も快適に過ごせるだろう。

大人過ぎない子供過ぎない誰もが振り返るようなカッコイイデザインのインサイトは今、注目の1台だと言えるだろう。

ホンダ インサイト EX ブラックスタイル 主要諸元
●ディメンジョン&ウェイト:全長×全幅×全高 4675×1820×1410mm、ホイールベース 2700mm、車両重量 1390kg
●パワートレーン:種類 直列4気筒DOHC+モーター、エンジン総排気量 1496cc、エンジン最高出力 80kW(109ps)/6000rpm、エンジン最大トルク 134Nm(13.7kgm)/5000rpm、モーター最高出力 96kW(131ps)/4000-8000rpm、モーター最大トルク 267Nm(27.2kgm)/0-3000rpm、燃料・タンク容量 レギュラー・40L、JC08(WLTC)モード燃費 31.4(25.6)km/L
●シャシ:駆動方式 FF、トランスミッション CVT
●価格 3,628,800円

●インサイト ラインナップ
LX (FF) CVT 3,261,600円
EX (FF) CVT 3,499,200円
EX ブラックスタイル(FF) CVT 3,628,800円

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.