バラードスポーツCR-Xとホンダをこよなく愛するカメラマン伊藤嘉啓氏の愛車CR-Xのオドメーターはなんと70万kmを越えている。これまで一体どこへ向かったのか、なぜそこまでCR-Xを愛するのか、そして今後の走行距離は何万kmに到達するのか…この連載を通してCR-Xの魅力とともに徐々に紐解いていく。今回は偶然出くわしたお宝をご紹介。なるほど、ただの破片も背景を知るとこんなに面白いとは。(文:伊藤嘉啓/デジタル編集:A Little Honda編集部)

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ゴミ?いえいえ、歴史が生んだ超お宝ですよ。

今年『昭和のホンダ車ミーティング』で意外なモノに出くわしてしまったんだ。それは、レーシングカーの破片。レースに興味のない人からすれば、タダのゴミなのかもしないけど、コレはタダのゴミで片付けちゃイケないオーラを放っている。

画像1: ゴミ?いえいえ、歴史が生んだ超お宝ですよ。

最近は行かなくなったけど、20年位前はボクも4輪レースの撮影を中心にしていた時期があった。で、全国のサーキットの往復にCR-Xを使ってたから走行距離が伸びちゃったわけだ。

実際にレースの撮影をしてると、クラッシュしたマシンの破片のうち外装類はあまり大事に扱われないことがある。それに対して、タイヤとかサスペンションだったりエンジンなどのパーツは、ライバルチームには見せたくないためか、チームスタッフが急いで回収に来たり、写真を撮られないよう厳しいガードをしているのだ。

フォーミュラマシンのカウルらしきこの破片は、特徴的な白と赤に塗り分けられている。マルボロカラーなのは一目瞭然である。

画像2: ゴミ?いえいえ、歴史が生んだ超お宝ですよ。

そして、もう一方の破片には大きくBOSSのロゴ(といっても缶コーヒーじゃない)にキルスイッチの表示、そしてブラジル国旗と並んでSennaと入ってる。そう、これはアイルトン・セナがドライブしていたマシンの破片だ!

画像3: ゴミ?いえいえ、歴史が生んだ超お宝ですよ。

Senna と入ってるカウルの破片をさらによく観察してくと、ターボエンジン時代じゃなくって自然吸気エンジンになってからのモノだということがわかる。ターボ時代はエンジンカウルが低くて、BOSSのロゴとSennaの名前はドライバー後方にあるロールバーに入ってたからね。

そうなると、この破片はマクラーレンMP4/5以降なのは間違いない。しかも、クラッシュして廃棄されかけたものじゃなきゃ、こんなトコロにあるわけないしね。

海外からワザワザ持ってくるのも難しいんじゃないかなって考えると、鈴鹿で開催された日本グランプリの可能性が高い。で、セナがクラッシュしたのは、1989年と1990年。どちらも熾烈なシリーズチャンピオンを争っていたプロストと絡んでるんだ。

1989年は、シケインで接触してプロストはその場でリタイアしちゃったけど、セナは最後まで走り切ってチェッカーを受けたものの、シケイン不通過の裁定で失格だった。セナ、プロスト共にマシンには大きなダメージを受けてないから、カウルが廃棄された可能性は低い。

翌1990年はスタート直後の1コーナーで接触。この時は2台ともコースアウトしてリタイアしてしまう。何とも後味の悪いレースだったけど、これでセナは1990年のシリーズチャンピオンを決めたんだ。この時は、セナのマシンも大きくダメージを受けてるから、カウルが廃棄された可能性がとても高い。

1991年はベルガーとワンツーフィニッシュ、1992年は、序盤にエンジントラブルでリタイアしてるから、この破片は90年の日本グランプリで、セナがドライブしたマクラーレンMP4/5Bのモノで、ほぼ間違いないと思う。

ヒストリーを知ると、その貴重さにビックリしちゃう。手に持つと、折り目がキレイで薄く軽いカーボンに、わずかに残る取り付けボルト類の精緻さが、F1のスゴさを醸し出してる。最初は複製品かもって思ったけど、こんな造りは中々できないから、ホンモノなのは間違いないんじゃないかな。

画像4: ゴミ?いえいえ、歴史が生んだ超お宝ですよ。

この破片、今は個人の方が所有してるんだけど、個人のコレクションじゃなくって、然るべきトコロに引き取ってもらいたいらしい。

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連載【地球に帰るまで、もう少し。】第1回から振り返ろう!

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